復職のゴールを、元の席へ戻ることだけにしない
架空企業F社は7月、メンタルヘルス不調などから休職した社員の復職支援を見直し、リワークプログラムと職務再設計を接続する運用を始めた。目的は、本人が元の職場へ戻れるかを試すことだけではない。戻る先の仕事条件を、再発や孤立を生みにくい形へ変えることだ。
以前のF社では、本人がリワークで安定して見えると、休職前とほぼ同じ業務へ戻すことがあった。復職直後は慎重でも、数週間後には会議、締切、顧客対応、評価面談が重なり、本人も上司も相談先を見失うことがあった。
新しい運用では、復職前に「元の仕事へ戻すか」ではなく「どの仕事条件なら戻れるか」を確認する。業務量、会議密度、判断負荷、相談タイミング、通院、回復時間、評価時期を同じ表に置く。

職場側の仕事条件も、再発リスクを左右する
F社の産業保健スタッフは、復職支援の焦点を本人の体調だけに置かない。休職前に何が重なっていたのかを、仕事の側から振り返る。長時間労働、割り込み対応、曖昧な評価、相談しにくい上司関係、繁忙期の戻し方などだ。
上司は、医療判断をする役割ではない。上司の役割は、業務量、締切、会議、連絡方法、顧客接点、チーム内の支援余力を具体的に説明し、復職後に小さく試せる仕事へ組み直すことだ。
ある管理職は「本人が戻れるかばかり見ていた。実際には、戻す仕事の密度や相談線を変えないと、また同じ状態を作ってしまう」と話す。

主治医、産業医、上司は、同じ会議より同じ見直し線でつながる
F社は、主治医、産業医、PSW、上司、人事が毎回一堂に会する仕組みを前提にしていない。医療情報の守秘、本人同意、職場の時間、制度上の役割が違うからだ。
代わりに、本人が同意した範囲で、必要な情報を短く接続する。主治医やPSWは、医療・生活の相談先として残る。産業医や人事は、職場で扱う健康配慮と就業上の見直しを支える。上司は、日々の業務量と相談タイミングを調整する。
情報線の中心は、病名そのものではなく、仕事を続けるための条件だ。何を減らすかだけでなく、いつ増やすか、どこで止めるか、困った時に誰へ戻るかを決める。

戻った後の三か月を、評価ではなく再設計期間にする
F社では、復職後三か月を「再設計期間」と呼ぶ。これは、成果を見ない期間ではない。復職直後の不安定さを、本人の失敗や上司の管理不足として扱う前に、仕事条件の調整データとして見る期間だ。
一週目は勤務時間と連絡方法、二週目から一か月目は業務量と会議参加、一か月以降は責任範囲と評価面談の時期を見直す。負荷を上げる時は、上げる理由、戻す条件、相談先を合わせて確認する。
本人は「戻ったらもう大丈夫でなければならない、という感じが減った」と語る。上司は「体調の責任を一人で背負うのではなく、業務密度と相談線を見ればよいと分かった」と話す。

標準体制として見る部品
健康時間の確認
通院、睡眠、回復時間、通勤、勤務時間を、復職後の仕事表に最初から入れる。
業務量と会議密度
休職前と同じ量に戻す前に、締切、割り込み、会議、顧客対応の密度を調整する。
相談線と評価分離
困りごとの相談を評価不安へ直結させず、復職直後の見直し線として扱う。
段階的負荷
負荷を上げる順番、戻す条件、次の見直し時点を決めて、仕事を小さく戻す。
再設計記録
何を変え、何が安定し、何が再調整になったかを、次の復職支援へ残す。
現場で使うなら、手順はこの順番
1. 休職前の条件を振り返る
本人の状態だけでなく、業務量、会議、評価、相談線、生活時間がどう重なっていたかを見る。
2. 復職後の負荷を仮置きする
勤務時間、担当業務、会議、顧客接点、責任範囲を段階的に戻す計画にする。
3. 支援線を本人同意で接続する
主治医、PSW、産業医、人事、上司の役割を分け、必要な情報だけをつなぐ。
4. 三か月で見直す
復職後の変化を評価だけで扱わず、仕事条件の再設計データとして確認する。
読後に話す問い
- リワークを、本人が元の職場に適応し直す訓練だけにしていないか。
- 休職前と同じ業務量、会議密度、評価時期、相談線へ戻していないか。
- 主治医、産業医、職場、人事、支援者の役割と情報線を、本人同意のもとで分けているか。
- 復職後三か月を、評価だけでなく仕事条件の再設計期間として扱えているか。
