NBLバーチャル・ニュース第18弾 / 架空記事2026年7月7日約9分

「手帳がない」で止まっていた相談。架空地域C県、難病のある人の働き方を次につなぐ評価へ

雇用率に算定するかだけでなく、配慮の話合いを始める材料、支援窓口への接続まで分けて残す。

病気があり、通院もある。疲れやすさや体調の波もある。それでも障害者手帳がないため、相談が制度の入口で止まってしまう。架空地域C県は、難病のある人の就労困難性を、一つの合否ではなく「算定」「話合い」「支援接続」の三つに分けて記録するモデル評価を始めた。

この記事は、実在地域のニュースではありません。障害者手帳を持たない難病患者の就労困難性に関する制度議論を、将来あり得る実装モデルとして考えるための架空記事です。

地域の就労支援窓口で、求職者と支援者が書類を確認している架空記事用の現場写真
机上には求人票、相談記録、通院予定を書いたメモ。C県のモデルでは、手帳の有無で話を止めず、次に確認する材料と支援先を整理する。

Quick read

「対象外」で終わらせず、次の相談先を残す。

手帳がないと、障害者求人、雇用率、支援機関の導線に乗りにくいことがある。

難病の働きづらさは、疲労、痛み、通院、体調の波、回復時間と仕事条件の組み合わせで表れる。

評価は「認定されるか」だけでなく、次に誰と何を確認するかを残す。

雇用率算定の入口と、配慮の話合いを始める入口を同じものとして扱わない。

手帳中心制度の根本課題を消さず、現場で相談が止まる場所を減らす。

窓口で止まっていたのは、本人の意欲ではなかった

「働きたい気持ちはあります。でも、週5日、同じ時間に通えるかと聞かれると、すぐには答えられません」。架空地域C県の就労支援窓口では、難病のある求職者からこうした相談が何度も寄せられていた。

通院がある。疲れやすい。体調が日によって変わる。けれど障害者手帳はない。障害者求人や雇用率の話になると、相談はそこで止まりやすかった。窓口で止まっていたのは、本人の意欲ではなく、困りごとを次の支援につなぐための共通の記録だった。

C県が変えたのは、制度そのものではない。相談が止まる場所を減らすための記録の仕方だった。手帳がない人を、いきなり「対象外」と見るのではなく、仕事、通勤、休憩、通院、体調の波がどこでぶつかっているかを先に書き出すことにした。

判定と支援設計を分け、三つの接続先を残す評価設計の図解
図解では、広い合理的配慮・差別禁止の射程と、狭い雇用率算定の入口の間で、手帳のない難病患者が見えにくくなる構造を示している。

評価シートを、落とす道具にしない

評価と聞くと、認めるか認めないかを決める紙を想像しやすい。C県の担当者が警戒したのもそこだった。基準を厳しくしすぎれば、ほとんど働けないほど重い状態の人しか残らない。反対に、配慮が必要なら誰でも算定対象にするとなれば、制度としての公正さが揺らぐ。

そこでC県は、評価シートを二つに分けた。A票は、雇用率算定に関わる最小限の判定材料を扱う。B票は、本人と支援者が使う仕事条件メモで、どの条件なら働き続けられるか、何を職場に共有し、何は共有しないかを整理する。

一つの紙で全部を決めようとすると、判定のための厳しさが相談支援まで狭めたり、相談支援の広さが算定判定まで広げたりする。C県のモデルは、評価を人をふるい落とす道具ではなく、次の話合いに進むための整理として使うことを狙った。

結果は一つではなく、三つの行き先に分ける

C県の評価では、最後に一つの合否を出さない。第一の行き先は、実雇用率算定に入るかどうか。第二の行き先は、算定に入らない場合でも、配慮や差別禁止の話合いを始めるために何を確認するか。第三の行き先は、ハローワーク、難病患者就職サポーター、難病相談支援センター、医療、企業内相談窓口のどこへつなぐかである。

合理的配慮や差別禁止の話合いは、手帳の有無だけで狭く読むものではない。一方、雇用率算定は企業の義務管理に関わるため、より明確な判定理由が求められる。この二つを同じ入口として扱うと、企業も支援者も、どこから話を始めればよいのか分からなくなる。

C県はこの結果を「認定結果」ではなく「接続結果」と呼んだ。算定するか、話合いの材料にするか、支援窓口につなぐか。評価の価値は、対象か対象外かを告げることではなく、次に会う人、次に確認する条件、次に開く相談窓口を残すことに置かれた。

制度の矛盾も、見えないままにしない

このモデルは、手帳制度の矛盾を完全に解いたわけではない。障害者手帳は行政上の明確な入口として使われてきたが、職業生活上の困難そのものを測る物差しではない。手帳の有無と、実際に働くときの困難は、一対一には対応しない。

海外には、慢性疾患や難病のある人をより広く雇用制度の対象に入れ、就労困難性に応じて追加的な認定を行う仕組みもある。日本で個別判定をつくるなら、手帳中心の入口をそのまま前提にするだけでは、別の恣意性を積み重ねる危険がある。

だからこそ、C県は個別判定を「手帳の代わり」とは呼ばなかった。現行制度の中で、手帳の外側にある職業生活上の不利益を一時的に見えるようにする橋として扱った。同時に、支援ニーズや職業上の制限をより広く制度対象にする根本改革は、別の政策論点として残した。

担当者は「矛盾を消したふりはしない。ただ、矛盾があるから何もしない、でもない。いま必要なのは、現場で困っている人の入口を少し開き、制度の根本課題も見える場所に残すことだ」と話す。

標準体制として見る部品

手帳だけで止めない相談

手帳の有無を見る前に、仕事、通勤、休憩、通院、体調の波がどこでぶつかっているかを確認する。

算定は慎重に扱う

雇用率算定は企業の義務管理に関わるため、相談支援の広さとは分けて判定理由を残す。

働く条件を一緒に見る

疲労、痛み、通院、体調変動、回復時間を、仕事量、通勤、休憩、評価と一緒に読む。

結果を三つに分ける

算定判定、配慮の話合い、支援ルート接続を、一つの合否でまとめない。

現場で使うなら、手順はこの順番

1. まず話を止めない

手帳がないことだけで終わらせず、どの仕事条件で困難が出ているかを聞く。

2. 医療的背景を必要最小限で確認する

診断、症状、治療、医学的制限、変動性を、仕事に関係する範囲で整理する。

3. 一日の働き方を具体化する

仕事量、勤務時間、通勤、休憩、職場環境、説明困難、支援接続を見る。

4. 算定と相談支援を混ぜない

ほぼ働けない人だけに狭めず、配慮が必要な人全員にも広げないよう、目的ごとの基準を点検する。

5. 次の担当者を決める

実雇用率算定、配慮の話合い、支援ルート接続のどこへ進むかを分けて記録する。

読後に話す問い

  • 手帳がない人について、配慮の話合いを始める入口は見えているか。
  • 雇用率算定、配慮の話合い、支援ルート接続を、一つの合否で潰していないか。
  • 疲労、痛み、通院、体調変動、回復時間を、職務や通勤、評価の条件として整理できているか。
  • 個別判定で補える穴と、手帳中心制度そのものの見直し課題を分けて残しているか。

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医療、法務、人事、合理的配慮妥当性の判断は扱わず、仕事条件を話す入口として使います。