雇用をお願いする前に、企業の仕事を一緒に読む
雇用をお願いする前に、企業の仕事の流れを一緒に読む。
入口を開く働きかけは必要だが、それだけでは雇用は続かない
支援者が企業に雇用をお願いする場面がある。もちろん、入口を開く働きかけは必要である。しかし、企業連携を採用のお願いとしてだけ進めると、本人は企業の不足を埋める道具のように扱われかねない。企業もまた、何を任せればよいのか分からないまま受け入れることになる。
このテーマを抽象論にしないため、ここでは次の場面から考える。
支援者が企業に雇用をお願いするが、企業側の滞り、品質確認、教育負荷、属人化をまだ聞けていない。
発表者は企業の業務フローを広げ、「お願い」ではなく「一緒に直す場所」を探す。
事業上の滞りは、新しい役割をつくる手がかりになる
企業には事業上の滞りがある。品質確認が属人化している。教育負荷が高い。小さな作業が散らばっている。記録や準備が後回しになっている。こうした滞りを一緒に読むと、雇用機会の入口が見えてくる。
このとき生じる緊張は、次の一文で表せる。
企業課題から仕事をつくることは有効だが、働く人を不足解消の道具にしてはいけない。
問題は、誰か一人の理解不足ではない。本人の経験、仕事の構造、職場の運用、支援のつなぎ方、評価の仕方が同時に見えにくくなることである。
企業課題に合うだけでは、本人にとってよい仕事とは限らない
ただし、事業課題に合うからといって、それだけでよい仕事になるわけではない。本人にとって意味があるか。公正に評価されるか。支援条件は説明できるか。報酬や役割は適切か。成長や見直しの余地はあるか。企業価値と本人便益を同時に見る必要がある。
特に、次の読みは分かりやすいが、そこで止まると本題を外しやすい。
- 「企業開拓は採用のお願いである」で止まると、実際に変えられる仕事条件が見えにくくなる。
- 「事業課題に合えば本人便益は後からついてくる」で止まると、実際に変えられる仕事条件が見えにくくなる。
読み違えを避けるには、「誰が悪いか」より先に、「どの条件が未確認か」を見る必要がある。
企業連携は営業ではなく、業務フローの共同設計である
企業連携は営業トークではない。業務フローを一緒に読み、どこに意味ある役割が生まれるかを探る共同設計である。支援者は企業を説得するだけでなく、企業の困りごとを仕事条件へ翻訳する。
このテーマで特に見る条件は、次の通りである。
- 事業上の滞り: 職場で滞っている業務、負荷、品質問題を見る。企業課題は雇用をお願いする材料ではなく、意味ある仕事を作る入口になる。
- 作業分解: 業務を価値、手順、負荷、必要支援に分けて見る。細かく分ける目的は雑用化ではなく、役割として成立する形を探すことである。
- 役割価値: その役割が誰の負担を減らし、何の価値を生むかを見る。価値が説明できない仕事は、参加ではなく雑用化へ滑りやすい。
- 本人側の条件: 本人の希望、体調、強み、苦手、働き方の条件を見る。企業課題に合うだけでなく、本人にとって続けられる役割かを確認する。
- 支援設定: 開始前に必要な道具、説明、練習、相談先を整える。支援を後から足す前提にすると、最初の失敗が本人評価へ直結しやすい。
- 公正な報酬: 役割の価値と報酬が見合っているかを見る。職務創出が安価な補助化に滑らないための重要な確認点である。
- 見直し関係: 企業、本人、支援者が見直しを話せる関係になっているかを見る。関係が弱いと、条件変更が苦情や失敗として扱われやすい。
これらはチェックリストではない。並べて終わりではなく、どの条件がどの条件を支えているか、どこで切れているか、どこなら見直せるかを読むための視点である。
事業上の滞り・作業分解・役割価値・本人側の条件をつなげて、条件の切れ目を見る
- 企業の困りごとは、雇用機会の入口になる。ただし不足解消の道具として本人を使う構図にしてはいけない。
- 事業ボトルネック、作業分解、役割価値、公正な評価、支援条件、本人の希望と成長を同時に見る。
- 企業開拓は営業トークではなく、業務フローを一緒に読み、どこに意味ある役割が生まれるかを探る共同設計である。
- 本人便益と企業価値の片方だけを優先すると、搾取、ミスマッチ、短期離脱につながりやすい。
ここで重要なのは、専門的な言葉を増やすことではない。現場で起きていることを、本人だけの問題、企業だけの問題、支援者だけの問題に押し込めず、関係する条件へ分けて見えるようにすることである。
よい雇用は、お願いではなく仕事の再設計から生まれる
よい企業連携では、雇用はお願いの結果ではなく、仕事の再設計の結果として生まれる。本人が使われるのではなく、役割を持つ。企業が善意だけで支えるのではなく、価値ある仕事として続けられる。そこに、営業ではない連携の意味がある。
動画やインフォグラフィックは入口になる。この本文は、その入口から少し奥へ進み、「なぜそう考えるのか」「どこを見ればよいのか」を文章で確認するための場所である。
企業・支援者・本人の問いに分けて、次の確認点へ進む
- 企業: その役割は事業上の価値と公正な評価を持つか。
- 支援者: 企業課題と本人条件の両方を見ているか。
- 本人: 役割が意味と成長を持つか確認できているか。